中国の唐代に成立した、実星を使う占星術「七政四餘」は、大変複雑な体系の占術である。私は、判田格先生から、この占術を教えて頂いた。
七政は日月火水木金土の七天体を表わし、また、四餘は羅睺・計都・孛星・紫気の四つの感受点を指す。
羅睺・計都は、インド占星術のRaph(ドラゴンヘッド)とKetu(ドラゴンテール)のことを、また孛星は西洋占星術で使用されるリリス(月の遠地点)のことを表わす。
紫気は、木星の余気と言われていわれているが、何の感受点を示唆するものなのか現在では不明である。七政四餘の研究家・東山宗憲先生と、数回お電話で話す機会があったが、西洋占星術に於いても知られている感受点であると謂れていた。
先生のご消息が不明である現在、それについて知る由もなく、至極残念である。
さて孛星(リリス)は、先に申した通り月の遠地点のことで、 ブラックムーンとも呼ばれている。リリスには、真値と平均値があり、その差は最大で29°近くズレる場合もある。好みによって一方を、或いは両方を使用する。
神話の一つでは、リリスはアダムの最初の妻となったが、イブが現れると、天使によって追放されてしまった。それを恨んで、男性を憎み、生まれてくる子供の身体と魂を喰い殺す悪鬼になったと伝わっている。
リリスは、9ヶ月で黄道上の一つのサイン(星座)を通過し、9年で黄道(12星座)を一周する。9ヶ月×12星座=108ヶ月となり、108は仏教では人間が有する煩悩の数とされている。
リリスは9と云う数字に縁があり、師匠の橋本航征師によれば、9は数霊的には火星を表わすとのこと。冥王星が発見される前は、牡羊座と蠍座の主星(支配星)であり、冥王星の発見後も、火星は蠍座へ影響を与えて続けている。
蠍座は性を象徴するが、蠍座のナチュラル・ハウスである8宮の象意は、因縁とか宿命を示唆している。リリスの象意は、火星の高いオクターブの惑星である冥王星に近いのかもしれない。
リリスの象意は、宿命、因縁、人生において深く関わる問題、理性でコントロールできないほどのめり込むもの、性、生と死、全てを奪うかすべてを失う、とことん好きになり徹底して嫌いになる、極端から極端に走る、徹底した変化、悪縁、霊、あの世、先祖、医学、運命学、霊障、宿命的な病気などなど。
その周期性から、九星術と通底するものがあるのかもしれない。
七政四餘にリリスが使用されていることは、リリスが占星術上の重要なポイントであることを示唆するとともに、この占術が西洋占星術の影響を色濃く受けていることを暗示するものと思われる。
一方、私の知るかぎり、インド占星術、そしてわが国の宿曜道に於いてはリリスは使用されていない。